落語家vs.鞄職人の異種格闘コラボレーション!:落語家・林家彦いちの袖形かばん

カテゴリー ニッポンの職人伝
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落語家・林家彦いち氏プロデュースバッグ第2段

落語家・林家彦いち氏プロデュースバッグ第二弾は「フルクリップ」とのコラボ!

落語会きっての鞄好き、落語家・林家彦いち氏のコラボバッグ第一弾「懐かばん」(ふところかばん)は、手作り帆布バッグの老舗・細野商店と製作した町歩きバッグだった。

2016年の『大人の逸品』ランキング第20位という大ヒット作だ。2017年、彦いち氏プロデュースバッグ、待望の第二弾として企画スタートしたのは、日本製の高品質バッグブランド「フルクリップ」と共同製作した「袖形かばん」(そでなりかばん)だ。これは、元々は自転車レースでの補給用バッグであるサコッシュを、究極のエクストラポケットとしてデニムで製作しようというアイデアだ。

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ルックスそっくり、趣味も同じという運命の二人が鞄作りで出会う!?

「袖形かばん」のキーマンはこの二人。「ないものは作る」と、得意の創作落語にも通じる根っからの鞄好きエンターテイナー、落語家・林家彦いちさん(左)と、株式会社アドのオリジナルバッグブランド「フルクリップ」プロダクトデザイナーである平垣亨さん(右)だ。
某日都内某所、一席おつき合いさせていただいた、株式会社アドでの彦いちさんと平垣さんの打ち合わせ。まず現場が湧いたのは鞄のことよりも、「えっ、兄弟!?」と見紛うばかりにそっくりなお二人の風体について。そんなお二人がこれまた共通の趣味である釣りの話で盛り上がる様は、他人とは思えない仲の良さなのだった。今回のコラボは、創造の神様が仕組んだ運命だったのかもしれない。

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彦いちさんのアイデアを具現化した、「袖形かばん」のファーストサンプル

まず彦いちさんのアイデアをまとめた企画書に対して、平垣さんがファーストサンプルを製作した。

「彦いちさんのアイデアは、最初から無理なことは全然ありませんでした。でも扇子ポケットというアイデアは、僕らでは思いつきません」と笑顔で話す平垣さん。さすがに鞄好きの彦いちさんだけあって鞄のアイデアは現実的なものだったが、実際の製作では試行錯誤があったようだ。

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 「同時に苦労したのも扇子ポケットでした。扇子を遊びなく入れたいのと、出しやすさのバランスが難しい。あと、ファスナーをむき出しにすると簡単なんですが、これは隠したかった。僕らも初めて挑戦した収納ポケットなので、ムキになって最高なものを模索しました」と、彦いちさんの秀逸なアイデアに対して、それを実現するために職人としてのプライドで挑んだという。
彦いちさんは、このファーストサンプルを一ヶ月間、実際に使用して使用感を試した。
「この扇子ポケットはやられた、と思った」と笑う彦いちさん。扇子ポケットをリクエストしたものの、どう表現されるかを楽しみにしていた。
「扇子ポケットとは言っていますが何を入れたっていいわけです。これは他の鞄にはない遊び心。扇子は大きな鞄の中ではどこにあるか見失うことがあるので、とても便利」と、自らのアイデアを具現化してくれた平垣さんを絶賛だ。

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物事を伝えるプロと物作りのプロによる、流暢で発想力に富んだセッション

しかし、彦いちさんもただの鞄好きな落語家さんではない。ファーストサンプルを一ヶ月使用することで、気になった点がいくつかあった。それをひとつひとつ丁寧に、そして具体的に平垣さんに説明してゆくが、その語り口はさすがにプロの噺家、とてもわかりやすく流暢だ。

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 そして彦いちさんの意見を聞きながら、瞬時にその解決策を提示する平垣さん。長い経験に裏打ちされた物作りのノウハウは、こちらもプロとしての面目躍如といったところだ。
コラボレーションの醍醐味は、こうした別々の創造力が互いに作用しあい、想像を上回る結末が導き出されることだろう。

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ライブ感あふれるバッグの修正作業!あっという間に「袖形かばん」は完成した

しかもこの打ち合わせがすごかったのは、彦いちさんが気になった点を平垣さんがその場で作業して、どんどん修正されていったところだ。
ベルトの長さが気になったと聞けば、アメリカ軍における軍用品の調達規格であるミルスペックに適合したナイロンテープをひと巻き持ち出し、彦いちさんの好みの長さにすぐさまカット。切り口を炎であぶって形を整え、株式会社アドの特許技術である「ジェットグライド」用のバックルを素早く組み付けてしまう。
また、ベルトとバッグ本体を繋ぐ樹脂製フックの大きさが気になると聞けば、すぐさまひと回り小さなフックに付け替えてしまうなど、打ち合わせはそのまま実際の修正作業となって、ダイレクトに進んでいった。

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 もちろん、すべてがこの場で修正可能だったわけではない。彦いちさんからは事前にバッグのサイズ感と扇子ポケットの容量について注文があったが、この日の打ち合わせ現場にはすでにサイズ修正されたセカンドサンプルが用意されており、この打ち合わせを経て完成となった。ファーストサンプルよりも少し大きくなった「袖形かばん」は、愛用のタブレット端末が出し入れしやすくなり、彦いちさんも大満足だ。

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デニム生地に牛革のオリジナルパッチ
彦いちさんのシンボルマークが刻印される

「袖形かばん」にはオリジナルデザインの革パッチが縫い付けられている。そこに型押しされているのは、彦いちさんのトレードマークだ。落語家になる前には武道を嗜み、極真空手の使い手だった彦いちさんの拳に、ほのぼのとカタツムリが這っているというユニークなもので、今回は金型から起こして製作された。

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 「拳だけじゃ怖いかと思って、カタツムリをデザインした」という彦いちさん。
「今回は型押ししただけですが、色を押すこともできますよ」という平垣さんの言葉に、ニヤリと何やら思いついていた彦いちさんであった。

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異なる発想が新しい商品を磨きあげるコラボレーション製品の可能性

「フルクリップ」の工房には鞄を作るための機材や材料がそこかしこに置いてある。ここで使われている工業用ミシンは、まるで自動車のエンジンのようなオイルパンを備えた自動給油式。家庭用とはスピードもパワーも違うが、平垣さんからプロの道具の説明を受けて目を輝かせていた彦いちさん。

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 今回の「袖形かばん」プロジェクトが引き合わせた二人のプロフェッショナルが、お互いの得意分野を生かしてひとつの製品を完成させる過程は、ライブのようであり、寄席のようでもあった。
「作り手が見える物作りっていうのかな。よく見ると細かいところまで、いい仕事をしている。どうです! と見せびらかす感じじゃない。そういったところが江戸前な工房ですね」と、「フルクリップ」の印象を語る彦いちさん。

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 「彦いちさんの仰る、ないものは作る、という考え方に共感しています。新しいものってわくわくするし、それを自分たちで作り上げていくのはもっとわくわくしますね」と語る平垣さん。
今回のコラボレーションが作ったのは「袖形かばん」という、新しい日常バッグだけではなかったのかもしれない。

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